ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2016.2.10 06:00

組体操てっぺん物語


今もさほど変わりませんが、子供のころは虚弱児で、
体温が36度を越えると、プールは見学させられるほどでございました。
5年生のころにはサラリーマン並みに胃痛に悩む毎日を凄し、
ランドセルを背負って歩くのは苦痛。
友達から夏祭りに誘われ、りんご飴をなめながら歩いておりますと
たちまち膨満感に襲われはじめ、まったく楽しむことができず、
「祭りなんか見学するぐらいなら自宅で芥川龍之介を読んでいたい・・・」
と真剣に思い詰めているありさまでございました。

痩せっぽちのひょろひょろで、徒競走はほとんど「置いてきぼり」のビリ。
障害物リレーに出ると、はるか先に行く子たちが倒したハードルの上を
ひょこひょこまたいで通過するようなノロマヌケ。
ですから、現在、大阪市教委が禁止したとして話題になっている
『運動会の組体操』では、「ピラミッド」も「タワー」も、常に一番上に乗る
役目でした。
一度、タワーの上から2番目の役をしたことがあるのですが、
上の子が肩に乗った瞬間、耐え切れず崩落。
やっと肩に乗せても、私ひとりぶるぶる震えて、まったく立ち上がることが
できず、失敗。
結局、先生の指示で、てっぺんの子と交代させられることになるのでした。

かくして、組体操の練習がはじまるわけでございますが・・・
この「てっぺん役」が、私の胃痛をさらに酷くさせる原因になるのでございます。
ピラミッドもタワーも、てっぺん役は、何人もの友達を踏んでのぼらねばなりません。
すると、踏まれた友達から文句を言われたり、恨まれたりするのです。

忘れもいたしません・・・あれは5年生の運動会。
6年生との合同チームによる3段タワーの練習でございました・・・。
2段目ができあがり、さあいよいよ私が登頂する段となりまして、
私は、1段目を支えていた、チームのなかでもっとも体格の良い6年生の女子の
背中に足をかけ、ぐんと踏みしめてのぼってゆきました。
このときタワー
成功し、「よし、これで本番も大丈夫」となりました。

ところが練習後、この踏まれた女子が、同じく1段目を支えている6年生女子4名
従えて、ものすごい形相で詰め寄ってきたのでございます。

「ちょっと、わたしを踏んでのぼるのやめてくれる!?」

「わたし見たわよ。2回も3回もこの子を踏んだでしょ」

「そうよ、この子に、なにか恨みでもあるわけ?」

「あたしにも足かけないでよねっ!」

ろ、ろくねん、こわいいーーーーーー・・・
そこで、次の練習からは、この6年生女子たちを避けて、同級生の友達を
踏んでのぼることにしました。
ところが、この友達は身体の線が細く、肩の上に2段目の子を乗せた状態で、
すでにいっぱいいっぱい。私が足をかけて体重を乗せたとたん、耐えられず、
タワーは崩壊してしまったのでございます。

そして悲劇が起こります。
先生がやってきて、あろうことか、例の体格の良い6年生女子様を指さし、
私に言うのです。

「彼女に足をかけてのぼりなさい」

オーマイガーッ!
しかし、ほかに方法がありません。仕方なく6年生女子の背中に足をかけると、
彼女は、「チッ!」と舌打ち。うーっ、胃が、ちくちくしてきた・・・。

ああ、このジレンマ。
私にとっての組体操は、このジレンマとの闘いでした。

運動会当日。
タワー3段目でよろよろ立ち上がった私は、こんなことを考えておりました。

(やっとこれで終われる・・・けど、終わったあとも怖い・・・うう、胃がちくちくするーっ!)

ニュースを聞いて、ふと思い出した5年生の運動会でした。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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